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三浦市から来た女

神奈川の三島市からやって来た子。

顔は丸顔で愛くるしいし、性格も優しい。

その上、頼まれた仕事は何でも引き受けてくれる。部署が違っても、嫌な顔一つせず素直に応じる。

だから社内の評判も上々で、彼女に対して悪口を聞いたことがない。

もちろん女性社員の人気も高いが、中心人物となるようことはなく、万事が控えめだ。

高卒入社で5年在籍しているが、浮いた話など一切耳にしなかった。

もっとも、控えめな性格で大人しいから彼氏が出来ないと思っていた。

女性同士での話であれば、大いに笑うし、ポツリポツリとではあるが、積極的に喋っているようだった。

会社は時間に関しては厳格で、特に退社は5時と決まっていた。ルール上残業する場合は申請しなければならなかった。

特に女性に関しては。

5時と言っても、片付け等で遅くとも特別の用事がない限り6時には幹部クラス以外ほぼ全員が退社していた。

しかし、彼女も5時に帰るのだが、いつも大きな紙袋を抱えていた。

不思議に思い、ある日その紙袋の中身について問い質した。

最初口ごもっていたが、とうとう白状した。

「実は日中仕事が終わらないので、家に仕事を持って帰ってしていました。」と。

我ながら、何故今迄気がつかなかっただろと悔やんだが、それはもう後の祭りだ。

自分にも腹が立ったが、他部署から仕事を押し付けられる事に対しても、腹が立った。

この件があって以来、社内には一切彼女には仕事をお願いするなという通達を出した。

この甲斐があってか、例の袋は手から消えていた。

顔も疲れが見えていたのに、なにか晴れ晴れした表情になり、明るさが見えてきた。

サクラの季節になった。

皆今年の花見の事で、仕事そっちのけで段取り話に大わらわだった。

少し寒いが、開花時期に花見決行となった。

花見は、例年のごとく、皆大いに飲み、大いに喋り、歌った。

花見が終わって片付けになると、皆不思議に全員が誰からの指示もないのに、一気に片付ける。見事なものだ。

周りの他のグループをみると、あまり片付けは捗っていない。

こういうところの一致団結、処理の素早さは見事なものだ。

花見が終わって半年が過ぎ、秋が訪れようとしていた。

そんなある日、彼女から突然「話があります。」と言われ、応接室で話を聞くことになった。

「実は今度結婚します。相手は、社内の○○さんです。」。

全然想像すらしていなかったので、驚いた。

接触の機会なんて全然ないと思って話を聞いてみると、付き合い始めたのは、例の花見からだそうだ。

最初は全然その気がなくて、一度はやんわりお断りしたものの、何度かデートに誘われて、何時も嫌とは言えないので暫く会っているうちに、この人なら良いかもと思ったそうだ。

花見が縁だなんて、日本人的だなと思いつつ彼女を祝福した。

三浦市の女性は概して明るい女性が多いらしいが、彼女のように大人しい女性も中にいるかもしれない。

そして彼女のように運良く男性から声を掛けられれば良いのだが、そういう機会にも恵まれない職場環境にいる女性も全国には少なくないのでは?と感じる。

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