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京都で出会った女

手を繋がれることは大嫌いだ。

本当にそうしたいのなら、自分から繋ぐ(あり得ないけど)。

女は何故手を繋ぎたるだろうか?

自分がおかしいのか?

確かにカップルを見ると、手を繋いでいるカップルが多い。

でも、自分としてはそうはしたくない。

その理由は分からないが、本当に手を繋ぎたい時にそうすれば良いのであって、実際女はのべつまくなしに手を握ってくる。それが嫌なのだ(もちろん別に繋ぐ気のない女もいるが)。

そして、手を払うと本気で怒ってくる。だから女は嫌いだ。

嫌いなら付き合わなければ良いのだが、悲しいかな男は女の蜜を知っている。

言うまでもないのだが、女の蜜とは、そう「あれ」だ。

「あれ」に近づきたくないと思っても、つい理性が負けて近づきたくなる。

つくづく女嫌いになったらなあ~、といつも思っていた。

女との精神的な結びつきなんてこれっぽちも今迄感じた事はなかった。

そして、その時は永久にこないだろうと思っていた。

それを、あの女は見事に破った。しかも、自然に。京都の女だ。

昔は京都なんて縁もゆかりもないと思っていた。

それを、あの女は軽々と破ってみせた。

そもそも京都の女は、慎み深く、貴位が高く上品だと勝手に想像していた。

ところがあの女は過去の京都の女のイメージを覆した。最もこちらが勝手に思っていただけのことだが。

もともと地方から大阪の大学に行って、月3~4回は京都に遊びに行っていた。

しかし、大阪の彼女はいても(直ぐ別れたが)京都の女とは知り合う機会がないから一人もいなかった。

大学でも知り合いに京都の女性は何故かいなかった。

多分いるとは思うけど、その時は全然見当たらなかった。

そんなある日、いつもは友達2人~4人で京都へ行くのにその日は違った。一人で行った。

ちょっと中心街を外れたところを歩いていた。

小さな公園があった。

4月の中旬というと、例年ならまだ幾分寒いはずなのに、その日は違った。暑いくらいだった。

そこで、木陰の下にベンチがあったので、そこに腰掛け、持参した小説を読み始めた。

全く騒音らしきものは聞こえず、ここに来る前色々歩いてきた疲労が出たのか、いつの間にか眠ってしまった。

何分くらい経ったのだろうか?静まり返った公園の中で、それも自分の直ぐ側で「キャー」とか「アー」とかの声が響いた。

深い眠りについていたので、半分意識は薄れた状態で目を開けた。

直ぐ側に女性の姿があった。二十歳台後半だろうか。しきりに「ごめんなさい」らしき言葉を繰り返しているようだが、一体全体何が起こったのか分からなく、ただアホのようにぼんやり女性の顔を見るだけだった。

どうやらこの女性は、自宅近くのこの公園を通り抜けてソフトクリームを買いに行ったらしい。

そして帰りもソフトクリームを片手に持ち、この公園を抜けて帰るところらしかった。

買いに行く時にも私の姿を認識していたので、帰りも少し避けるように通りすぎようとした。

しかし、かかとの高いサンダルを履いていて、向きを変えて前に行こうとした瞬間、なにか粘着性の板のようなものにそのサンダルが引っ掛かって、体のバランスをくずし、私の太ももに、左手に持っていたソフトクリームごと寄りかかってきたのだ。

目が覚めた私は、無残にも砕け散って地面に落ちたソフトクリームと読みかけの本、そして女性の姿があった。

しきりとすまなさそうに謝るので、「大丈夫です。ご心配なく」と一言いった。

確かにソフトクリームで汚れた箇所がジーンズに微かに跡が残っているのだが、どうせ捨てても惜しくないような安物だ。

そこで、もう一度「本当に大丈夫ですから。」と言うと、今度は驚いた事に彼女の自宅に来てくれと言う。初対面なのに。

来てくれと言う意味が分からなかったが、汚してしまった箇所を綺麗にする事と、お詫びをしたいとの事。

今時こんな奇特な人、しかも京都人で?と疑問に思いつつ、「急ぎの用があるので」と言ってその申し出に対して丁重に辞退した。

別れ際に、「じゃあ、電話番号を教えて下さい。」と言ったので、別に拒否する理由もないので教えて別れた。

たぶん、もう二度と会うこともないだろうと、その時は思っていた。

その夜は疲れていたので、早く寝ることにした。と言っても午前二時前くらいだ。

次の日、のんべんだらりの生活を送ってきた自分には午前中は苦手だった。

そんな眼が覚めきらないところに、玄関のドアをノックする音が聞こえる。呼び鈴は付いてない。

ここは、大阪で言う「文化住宅」。二間あり、日中でも暗く、電灯をつけなければならない。

来客なんて大阪にいる彼女と別れてからは、悪友くらいしか来ない。それもめったに。

急いで着替えドアを開けると、何と驚いた事に昨日の女性が立っていた。

昨日の光景は衝撃的だったので覚えているが、女性そのものはあまり記憶にない。

それに紫外線カットのためか、つばの広い帽子を被っていたので尚更だ。

今日ハッキリ顔を見た。

目鼻立ちがハッキリしていて、目が大きい美人タイプだ。言葉がハキハキしていて、何か気圧されるような感じだ。

こういうタイプはどうも苦手だ。平均的京都の女性の何たるかは知らないが、こういうタイプは少ないのでは?と躊躇していると、

「上がらせてもらっても良いですか。」と明るく聞いてきた。

自分の常識からしたら、男の一人世帯に女性が上がるなんて、と思っていたから、唐突過ぎて言葉にならない。

駄目ですとは言えないし、と言ってどうぞとも言えないし、「え」・「あ」とかそんなおよそ言葉にならない声が出てしまった。

その女性は、「じゃあお邪魔します。」と言って勝手に上がってしまった。

幸い部屋は昔からの週間で、まあ見られる程度には片付いている。

それから持参してきた小さい箱のような物(商品券だった)と菓子折りを差し出し、「これはほんのお詫びのしるしです。」と言いつつ、それから次から次へと喋り始めた。

喋り慣れているせいか、あるいは元々お喋りが好きなのか分からないが、こちらは一方的に聞くだけだった。

最初は、セールスレディのようで、「ひょっとして保険か何かの勧誘か?」と訝しんだが、帰るまでそういう話題はなかった。

このご時世、隙あらば自分の利益のことしか考えない人間が増えつつあるから、この女性もそうだったとしても不思議ではない。

二時間くらい経ってようやく女性は帰っていった。

疲れがどっと出た。一方的に話を聞くのは苦手だ。

部屋全体に女性の残り香が漂っていて、独身の悲しさ、ムラムラがきた。

それにしても住所を教えてないのにどうして調べたのか疑問だったが、恐ろしくもあった。

この日を境に、女性は毎週当たり前のようにオンボロアパートにやって来た。

大体午前十時から十一時くらいに来るので、働いてないのだろう。

その事を恐る恐る聞いてみると、家の商売を夜手伝っているらしいとの事。

ラウンジかバーかはたまたスナックか分からないが、従業員は十名以上いて、気が進まない時は休んでるらしい。

酒は強いらしいが、タバコは吸わない。理由が傑作で、「髪が臭くなる。」。健康よりこの事が優先するらしい。

初めて会ってから、半年が過ぎようとしていた。

もう殆ど男性・女性のわだかまりもなくなっていたが、何処かに行こうと言う事はなかった。いつもアパートに来てアパートから帰っていく。

相変わらず彼女は家へ来て、一方的に喋って、自分で持参したお菓子やフルーツを食べて勝手に帰っていく。不思議な女性だった。

ここのアパートは同じ造りのものが二棟あって、玄関が向かい合わせになっている。そしてほとんどの世帯が夫婦だから、日中の光景はいつも主婦数人が立ち話をしていた。共稼ぎは何故か少ない。

主婦は苦手だが、話さないわけにもいかず、いつも呼び止められ、あれこれ聞かれる。適当に相槌打って、ヘラヘラ笑ってやり過ごすが、あまり話題になるのは好きではない。

例の彼女は誰か早速好奇な目で聞かれた。「姉です。」と一言答えると、「あら、もう一人のお姉さん?」と軽く笑われた。

そう言えば、このアパートに引っ越して来る時に姉に三日ほど手伝ってもらった事があった。

それをしっかり忘れていた。主婦の記憶力恐るべし。

まあ顔も似てないし、仕方ないか、とお思いつつあきらめた。もちろん言葉は濁したままであった。

少し肌寒くなってきた。コタツは嫌いで、かと言ってストーブを出すのには早い。結局コタツを出した。

コタツは快適だが、直ぐ寝てしまうので、あまり使いたくない。うたた寝すると体にも悪いし。

コタツを出した日、また彼女が来た。もう今では、何曜日にアパートに来ればよいか把握していて、電話なしでやってくる。

めったにないが、夕方来たり、夜来ることもある。しかし、合鍵は渡していないし、彼女もそれを求めなかった。

その日は夜だった。腹が減って何か外食したい気分だったが、彼女が来るので待たなければならなかった。

やがて来てからその事をを告げると、自分は欲しくないと言う。

彼女一人残し、近くの食堂に行き、四十分かけてゆっくり食べた。普段は自炊しているが、ここの食堂にも良く来る。出るのが早いし、安いし、その上美味い。

家に帰ってみると、彼女は横にになっていて寝ていた。

寝姿を見ると、急に襲ってやりたい気分に駆られた。

しかし、そんな事は出来ず、顔だけを近づけていった。

不意に彼女の目が開いた。びっくりしたが、蛇に睨まれたカエルのような状態で、視線が外せない。

その間何秒だったが分からないが、心臓の鼓動だけがドキドキ聞こえた気がする。

自分自身でも分からないが、彼女の唇へそおっと唇を重ねてしまった。

その時彼女の腕が背中にまわり、後は無我夢中だった。

この日が実は「地獄」の始まりの日だった。

その「地獄」を詳細に書くわけにはいかないが、一つ言える事は、陳腐な表現だが、「人生何事も経験。」。

たまたま京都へ一人で行き、京都で出会い、それがきっかけとなってなって地獄を味わされてくれた女。

それが陽子だ。

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