出会い・恋愛体験他

サチという女

「アイタタ!」痛みで目が覚めた。飛び起きて鏡を見る。

おでこに歯型が付いている。そして、血も滲んでいる。

寝ぼけ眼で、回らない頭で考えてみる。

これは寝入っている彼女の仕業と思うに時間はかからなかった。

あまりの痛さに、タオルを冷やして額に当てるが、一向に痛みは引かない。

まんじりともせず、痛みが取れないまま朝を迎える。
女はサチといった。

よくある話かもしれないが、大阪の、とあるところで偶然知り合った。

21歳の地方大学生。週の半分近く、何故か地元の大阪に帰って来る。

彼女は、少々小柄で気さくだ。人当たりも良いし、よく喋る。

そんな彼女と意気投合し、毎週末居酒屋で飲み、そしてホテルで朝を向かえた。

話に夢中になり、体の関係無しで一夜を明かした事も何度かある。

それが、今回ひどい仕打ち。訳が分からなかった。

彼女は目が覚めると、何も言わず、一言「別れる。」と言った。

売り言葉に買い言葉、「分かった。」とこちらも一言だけ言う。

実は、内心別れるつもりだった。付き合っていて、何か荷が重かったのだ。

原因は後日知ることになるが、彼女の友達がこちらが別の彼女といるところを偶然目撃し、それを彼女に言ったらしかった。

別にその目撃された女性は彼女でも何でもなかったのだが、勘違いした友達が告げ口したようだった。

その事件以前に、こんなことがあった。

「家へ遊びに来ない?」と言われ、軽い気持ちで「ああ、いいよ。」と返事した。

鈍感な自分は何も考えず、「遊び」という言葉でノコノコ出かけて行った。

すると、どうだろう。一家全員が揃って出迎えてくれているのではないか。

普段着のまま行って、気が重くなってきた。

どうやら場違いなところに迷い込んだような気分だ。

ひょっとして、彼女がどう言ったか分からないが、ここの家族は完全に結婚を前提に考えているのではないかという不安が頭をよぎった。

それでも、昼食をはさんでの5時間、何とか当たり障りのない会話でどうにか切り抜けた。

それから地方から帰って来るたびに「家へ来て」コールが始まった。

その時点では、結婚のことなど頭になかったし、したいとはこれっぽちも考えた事はなかったので、色々理由をつけて断り続けた。

友達の告げ口事件と自宅への誘いを断り続けた、この二つが重なって衝動的に「おでこ事件」を起こしたのだろうか?

別れた今となっては知る由もないが、額の不名誉な傷は未だに残っているし、消えそうにもない。

女は恐ろしい、と感じるのみだ。

-出会い・恋愛体験他